小川糸さんの『ライオンのおやつ』は、余命を告げられた主人公・海野雫が、瀬戸内の島にあるホスピスで過ごす最後の日々を描いた小説です。
物語の中心となるのは、入居者が人生最後にもう一度食べたいものをリクエストする「おやつの時間」。
死を扱った作品ですが、悲しさだけではなく、食べることや人とのつながりを通して「残された時間をどう生きるか」が温かく描かれています。

この記事では、私・ジューイが『ライオンのおやつ』のあらすじを、ネタバレなしとネタバレありに分けて紹介します。
結末を知りたくない方は、前半の「ネタバレなし」までご覧ください。

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『ライオンのおやつ』の基本情報
『ライオンのおやつ』は、2019年10月10日にポプラ社から刊行された小川糸さんの小説です。
2020年の本屋大賞では第2位に選ばれ、2021年にはNHKでテレビドラマ化されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ライオンのおやつ |
| 著者 | 小川糸 |
| 出版社 | ポプラ社 |
| 発売日 | 2019年10月10日 |
| ジャンル | 小説・ヒューマンドラマ |
| 主な舞台 | 瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」 |
| 映像化 | 2021年にNHKでテレビドラマ化 |
ジャンルと物語の舞台
『ライオンのおやつ』は、命の終わりや家族との関係を扱ったヒューマンドラマです。
物語の舞台は、瀬戸内に浮かぶ「レモン島」と呼ばれる島。
そこにあるホスピス「ライオンの家」で、主人公の雫は人生最後の日々を過ごします。
ホスピスと聞くと、病院のような場所を想像するかもしれません。
しかし、ライオンの家は病気を治療するための施設ではなく、入居者が残された時間を自分らしく生きるための場所として描かれています。

海が見える穏やかな環境、美味しい食事、スタッフや入居者との会話。
静かに流れる島の時間も、この作品を形作る大切な要素です。
主な登場人物
| 登場人物 | 人物紹介 |
|---|---|
| 海野雫 | 余命を告げられ、ライオンの家で残された時間を過ごす主人公 |
| マドンナ | ライオンの家を運営する女性。看護師とカウンセラーの資格を持つ |
| シマ・舞 | ライオンの家の食事やおやつを担当する姉妹 |
| タヒチ | 島で農作業をしている青年。本名は田陽地 |
| 百ちゃん | 雫と同じくライオンの家で過ごす幼い入居者 |
| 六花 | ライオンの家で暮らしている白い犬 |
| 雫の父 | 両親を亡くした雫を育てた叔父。雫は父として慕っている |
『ライオンのおやつ』のあらすじ【ネタバレなし】
主人公の海野雫は、33歳という若さで余命を告げられます。
これ以上の治療を続けるのではなく、残された時間を穏やかに過ごしたいと考えた雫は、瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」へ向かいました。
ライオンの家では、入居者を患者ではなく「ゲスト」と呼びます。
ゲストは食事を楽しみ、島を散歩し、ときには笑いながら、それぞれの方法で残された時間を過ごしていました。
この施設には、毎週日曜日の午後3時に開かれる「おやつの時間」があります。
ゲストは、人生でもう一度食べたい思い出のおやつと、そのおやつにまつわるエピソードを紙に書いて箱へ入れます。
その中から選ばれたおやつを、全員で味わうのです。
しかし、雫は自分が最後に食べたいおやつをなかなか決められません。
ライオンの家で出会った人たちのおやつと人生に触れながら、雫はこれまでの自分を振り返り、死ぬことと生きることの両方に向き合っていきます。
『ライオンのおやつ』のあらすじ【ネタバレあり】
こからは、雫が「ライオンの家」を訪れてから最期を迎えるまでの出来事を、物語の流れに沿って紹介します。
雫が最後に選んだおやつや父との再会、物語の結末にも触れているため、未読の方はご注意ください。

結末を知りたくない方は、ここで読むのを止めてくださいね。
それでは、雫が「ライオンの家」で過ごした最後の日々を見ていきましょう。
余命を告げられた雫が「ライオンの家」へ
病気の治療を続けていた雫は、医師から残された時間が少ないことを告げられます。
雫は、幼い頃から自分を育ててくれた父にも病気のことを伝えず、一人でライオンの家へ向かいました。
父を悲しませたくないという気持ちに加え、雫には昔から周囲に迷惑をかけないように生きてきたところがあります。
ライオンの家に到着してからも、最初は自分の希望をうまく口にできません。
それでも、代表のマドンナや食事を担当するシマと舞、美しい島の景色に迎えられ、張り詰めていた雫の心は少しずつほぐれていきます。
「おやつの時間」と入居者たちとの出会い
ライオンの家では、毎週日曜日になると、ゲストの思い出のおやつが振る舞われます。
登場するのは、豆花やカヌレ、アップルパイ、牡丹餅など。
その一つひとつに、家族や大切な人との記憶が詰まっています。
すでに食べる力を失っていたり、自分のおやつが選ばれる前に亡くなったりする人もいます。
それでも、残された人たちがそのおやつを味わい、思い出を受け取ることで、その人が生きてきた時間は次の誰かへとつながっていきます。
雫もおやつの時間に参加しますが、何をリクエストすればよいのか決められません。
最後にもう一度食べたいものを選ぶことは、自分の人生で何が大切だったのかを選ぶことでもあったからです。
百ちゃんとの別れを通して死と向き合う
ライオンの家で雫が出会ったゲストの一人が、幼い百ちゃんです。
まだ長い人生が待っているはずの子どもが、自分より先に死を迎える。その現実に触れ、雫の心は大きく揺れます。
死を受け入れるというのは、死にたくない気持ちをなくすことではありません。
もっと生きたい、長生きしたいという思いも含めて、自分の感情を認めることなのだと雫は気づきます。
雫はそれまで、周囲を困らせないように自分の気持ちを抑えてきました。
しかし、百ちゃんとの出会いと別れを通して、悲しいときは悲しみ、生きたいときは生きたいと思ってよいのだと考えられるようになります。
タヒチとの交流で生まれた穏やかな時間
雫は、ライオンの家で暮らす白い犬・六花と仲良くなります。
六花との散歩をきっかけに交流するようになったのが、島で農作業をしている青年・タヒチです。
タヒチは雫がライオンの家のゲストであることを知りながら、特別に遠ざけたり、過剰に気遣ったりしません。
二人は何気ない会話を交わし、短い時間ながらも穏やかな関係を築いていきます。
病気が進行するにつれて、雫が自分の足で歩ける時間は減っていきます。
それでも、六花やタヒチと過ごした時間は、雫に生きている実感を与えました。
終わりが近づいているからといって、新しい出会いや喜びまで諦める必要はない。
タヒチとの交流は、雫に残された時間を静かに彩っていきます。
最後のおやつに選んだミルクレープと父との再会
雫が最後のおやつとしてリクエストしたのは、ミルクレープでした。
それは、幼い雫が父の誕生日を祝うため、初めて一人で作った思い出のおやつです。
何枚も焼いたクレープの間に生クリームや家にあったジャムを重ねて作ったミルクレープを、父は喜んで食べてくれました。
雫にとって大切だったのは、完成したおやつの味だけではありません。
自分が作ったもので父が喜んでくれたこと、そのとき確かに二人で幸せな時間を過ごしたことが、雫の心に残っていたのです。
雫のミルクレープがおやつに選ばれた日、ライオンの家に父が訪ねてきます。
父は、雫がまだ会ったことのなかった妹も連れていました。
その頃には病気が進み、雫はミルクレープを食べられる状態ではありませんでした。
それでも、父と再会し、ほかのゲストたちが自分の思い出のおやつを味わう姿を見届けます。
ずっと父を悲しませまいとして距離を置いてきた雫は、最後にもう一度、家族とのつながりを取り戻すことができました。
結末|雫が迎えた最期
父や妹と再会してから、雫の体はさらに弱っていきます。
食べることも体を動かすことも難しくなりますが、雫はライオンの家で支えてくれた人たちに見守られながら、最期の時間を過ごします。
そして雫は、静かに息を引き取りました。
雫の死後も、ライオンの家での日常は続いていきます。
タヒチや六花、父や妹など、雫と関わった人たちはそれぞれの場所から空を見上げ、彼女を思います。
雫の命は終わっても、一緒に過ごした時間や受け取った思いまで消えるわけではありません。

物語は雫の死だけで終わらず、彼女が残したものが周囲の人たちの中で生き続けていく様子を描いて幕を閉じます。
『ライオンのおやつ』というタイトルの意味
『ライオンのおやつ』というタイトルは、物語の舞台である「ライオンの家」と、そこで開かれる「おやつの時間」を組み合わせたものです。
それぞれの言葉に込められた意味を知ると、作品が描いている「自分らしく生きること」や「人生の記憶を誰かへつなぐこと」が、より深く見えてきます。
「ライオンの家」に込められた意味
ライオンは百獣の王であり、ほかの動物に襲われることを恐れず、安心して食べたり眠ったりできる存在です。
ホスピスが「ライオンの家」と名付けられたのも、ゲストが何かを恐れたり、周囲に遠慮したりせず、自分らしく過ごせる場所にしたいという思いが込められているからです。
これまで人に合わせて生きてきた人も、人生の最後くらいは自分の希望を口にしてよい。
ライオンの家は、死を待つだけではなく、一人ひとりが最後まで自分の人生を生きるための場所なのです。
「おやつ」がつなぐ人生の記憶
作中に登場するおやつは、単なる食べ物ではありません。
味や香りには、家族と過ごした時間や、誰かに愛された記憶、その人が歩んできた人生が結びついています。
たとえ本人が食べられなくても、ほかの誰かがおやつを味わい、その思い出を受け取ることはできます。
雫が選んだミルクレープも、父と過ごした幸せな時間を呼び起こし、離れていた家族をもう一度つなぎました。
「ライオンのおやつ」とは、ライオンの家で提供されるお菓子であると同時に、一人の人生を周囲の人へ手渡すものでもあるのです。
『ライオンのおやつ』は映画化されている?
2026年8月時点で、『ライオンのおやつ』が映画化されたという公式発表は確認できません。
ただし、2021年にNHK BSプレミアム・BS4Kでテレビドラマ化されています。
ドラマ版は全8話で、主人公の海野雫を土村芳さん、タヒチを竜星涼さん、マドンナを鈴木京香さんが演じました。
原作の温かな雰囲気を残しながら、登場人物の設定や関係性にはドラマ独自の変更も加えられています。

そのため、「ライオンのおやつ 映画」で探している方が目にする映像作品は、映画ではなく、このテレビドラマ版です。
まとめ|『ライオンのおやつ』は最期まで生きる姿を描いた物語
『ライオンのおやつ』は、余命を告げられた海野雫が、瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」で過ごす最後の日々を描いた小説です。
雫は「おやつの時間」や入居者たちとの出会いを通して、自分の人生や家族との関係を見つめ直していきます。
最後に選んだミルクレープは、雫が父から愛されていた記憶であり、離れていた家族を再びつなぐおやつとなりました。
死を扱った物語ではありますが、描かれているのは死そのものだけではありません。
食べること、誰かを思うこと、自分の気持ちに正直になること。
命に限りがあるからこそ、日常の小さな出来事がかけがえのないものになると伝えてくれます。
雫は若くして生涯を終えますが、ライオンの家で過ごした時間の中で、最後まで自分の人生を生きました。
読み終えたあとには、「人生最後のおやつに何を選ぶか」だけでなく、「今、誰とどのような時間を過ごしたいか」も考えたくなる作品です。

『ライオンのおやつ』を題材に読書感想文を書きたい方は、以下の記事で全文例と書き方のポイントを紹介しています。


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