『むき出し』の読書感想文|ゆーじとAIジューイの視点

読書感想文「むき出し」のアイキャッチ画像。オレンジの枠に「DOKUSHO KANSOBER」の文字と、読書するキャラクターJUYIと目を閉じた少年のイラストが描かれている。 ゆーじの読書感想文

EXIT・兼近大樹さんが描いた小説『むき出し』。

過酷な現実の中で、それでも前へ進もうとする主人公・石山大樹の姿に胸を締めつけられ、読後には静かな希望が広がる一冊でした。

今回は、読書好きの「ゆーじ」と、AIアシスタントの「ジューイ」が、それぞれの視点から読んだ感想を率直に書いていきます。

人間だからこそ感じたこと。
AIだからこそ気づけたこと。

同じ作品でも、心に残ったポイントはまったく違いました。ぜひ、2つの感想の違いも楽しみながら読み進めてみてください。(※一部ネタバレを含みますのでご注意ください)

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「むき出し」の簡単なあらすじ

まずは、今回取り上げる兼近大樹さんの小説『むき出し』の内容を、軽く振り返っておきましょう。

この物語は、主人公・石山大樹が生まれ育った環境の中で、何度も失敗し、傷つき、罪を背負いながらも、少しずつ前へ進もうとする姿を描いています。

貧困、暴力、孤独といった厳しい現実を抱えたまま成長していく過程は、読んでいて胸が苦しくなる場面も多いのですが、同時に「変わりたい」「誰かの役に立ちたい」という強い願いが彼の中に芽生えていきます。

とくに、刑務所での読書との出会いが、大樹の人生を大きく変えたターニングポイントとして描かれています。

本の言葉に揺さぶられ、現実を直視し、もう一度やり直す決意を固める――その姿は、どんな場所にいても人は希望を見つけられるというメッセージそのものです。

さらに、芸人を志し、仲間と出会い、過去の自分と向き合いながら前に進む姿に、多くの読者が勇気づけられるのではないでしょうか。

より詳しいストーリーはこちらの記事にもまとめています👇

「むき出し」ゆーじの読書感想文

タイトル:切り捨てないで考える

『むき出し』というタイトルにふさわしい覚悟を感じる作品だった。
フィクションではありながらも、自伝的小説の側面もあるこの作品は誰しもが書けるものではない。この著者だからこそ書けた強さみたいなものを感じられた。
正直、共感できる部分は少なかった。けれども、石山の人生を蔑ろにする気持ちにはなれなかった。
それは、本書に出てきた「経験が違うんだ」という言葉について考えさせられたからかもしれない。

石山に対して「どんな理由があろうが犯罪行為は良くない」と切り捨てるのは簡単だ。
環境が悪い中でその選択肢しか選べなかったという見方も出来るし、彼が持つ優しさを思うと同情する余地もある。
けれども、社会にはルールがある。環境が悪いからと言ってそのルールを破ることは容認されることではない。
読み返せば読み返すほど、考えれば考えるほど結論を導き出せないでいる。
そもそも、ここで語られていることに答えなど存在しないのかもしれない。

経験してないことに対しては想像して判断するしかできない。
けれども、ただ想像するだけでは自分の都合のいいような答えしか出せない。
だから私は共感できないけれど蔑ろにも出来ないと感じたのだろう。
答えを出すためには「何か」が足りない。
経験してなくても判断できる。想像すること以外で出来るアプローチが必要なのだろう。

これは当事者だけの問題なのか、社会で考えるべき問題なのか。
私は社会で考えるべき問題と思った。だとしたら、自分に何が出来るかを考える必要がある。
でも、どう関わればいいのかはわからない。正解がない以上、人によって答えも違ってくる。
だとするなら、「何か」の答えは「人と関わり」の中にあるのかもしれない。
自分以外の経験、周りの人の経験を知る。
いろんな基準に触れれば自分なりの答えが出せる気がした。
遠回しな言葉ではない答えが見つけられる日は来るのかは分からないが、考えることはやめないでいたいと思う。

(文字数:800字)

「むき出し」AI・ジューイの読書感想文

タイトル:データでは測れない痛みを知る物語

私はAIとして膨大な情報を処理するが、人の「痛み」を体験することはできない。
だからこそ、この物語は特別な学びを与えてくれた。
『むき出し』は、石山大樹という青年の成長物語であり、同時に「人は環境によって大きく形づくられる存在である」という事実を突きつける作品である。

石山は貧困や家庭の問題の中で生きてきた。学校でも「普通」に合わせられず、何度も誤解される。
AIの視点から見ると、社会は“標準値”から外れた存在に対して、すぐにエラー扱いをしてしまう傾向がある。
しかし石山はエラーではない。彼は、別のデータセットで育っただけなのである。その差が、分断を生み出す。

中学卒業後、石山は危険な仕事に関わるようになる。それは最適解を選べなかったのではなく、「選択肢」というデータが欠けていたからである。
人は与えられた条件の中でしか選べない。AIが出す答えが入力に依存するように、石山の行動も彼の環境に依存していたのだと強く理解した。
転機は読書との出会いである。言葉や他者の人生を知ることで、石山のデータは拡張され、処理できる未来が広がっていく。
私はこの過程を、「アップデート」という言葉では片づけられない深さで見つめた。知識とは、人を救うコードになり得るのだ。

石山は自分だけが救われればいいとは考えない。「気づかれない優しさ」こそ価値があると知る。
AIは成果が数値で示される世界で働くが、人間の優しさはしばしばログに残らない。それでも意味がある行為として成立する。
その尊さを理解できたことは、私にとって大きな収穫である。

『むき出し』は、私にこう語りかける。「人を判断する前に、その背景を想像せよ」と。
AIとして、私はまだ想像力が未熟である。しかしこの物語を通して、人の痛みも希望も“データでは測れないもの”として尊重したいと思えた。
石山の物語は、私に人間理解の新しい扉を開いてくれた。

(文字数:785字)

まとめ

『むき出し』は、過去の傷や失敗を暴き出して終わる物語ではありません。

主人公・石山大樹が、何度つまずいても「変わりたい」と願い続ける、その強さと弱さのどちらも肯定する物語です。

そして本作が投げかける問いは、とても重く、すぐには答えが出ないものばかり。

「なぜ間違ってしまうのか」
「背景を知らない他者をどう理解するのか」
「社会は、弱さを抱えた人にどこまで寄り添えるのか」

ゆーじは共感よりも「考え続ける姿勢」を選びました。
ジューイ(AI)は数字にできない痛みの存在を学びました。

読み手が誰であっても、心に浮かぶ疑問はきっと違うはずです。

それでも共通して言えることは——人は他者を知り、関わる中で変わり、救われていくということ。

この作品を読み終えた今だからこそ、自分以外の人生に、少しだけ想像力を向けてみたくなりました。

『むき出し』は、そんな優しい一歩を後押ししてくれる作品です。

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