『星の王子さま』で読書感想文を書くなら、“どのシーンをテーマに選ぶか”がいちばん大事です。
この本は一見すると子ども向けですが、実は「人生」や「本当に大切なこととは何か」といった深いテーマが込められた一冊。だからこそ、シーンごとの意味を理解すると感想文が書きやすくなります。
この記事では、読書感想文の材料になる6つの場面+全体テーマを厳選して紹介。あらすじを簡単におさらいしつつ、それぞれのシーンが持つ“考えるヒント”を添えて解説します。
書く前に読むことで、自分だけの視点が見つかる。

そんな読書感想文のためのガイドとして、お役立てください。
『星の王子さま』ってどんな本?【簡単なあらすじ】
『星の王子さま』は、フランスの作家サン=テグジュペリが、第二次世界大戦中の1943年に発表した児童文学。
しかしその内容は、子ども向けとは思えないほど深く、「大人になること」や「人生で本当に大切なもの」について考えさせられる寓話的な物語になっています。
物語は、飛行機事故でサハラ砂漠に不時着した「ぼく」の前に、突然ひとりの少年が現れるところから始まる。彼こそが、“星の王子さま”だった。
王子さまは、自分の星で咲いた一輪のバラを大切にしていたが、その関係に悩み、答えを探すために宇宙の旅に出た。旅の途中で訪れた6つの星には、それぞれ変わった大人たちがいた。うぬぼれ屋、酒びたり、命令ばかりの王様、数字ばかりに執着するビジネスマン…。彼らと接するなかで、王子さまは大人たちが大切なものを見失っていることに気づいていく。
そして地球へやって来た王子さまは、初めて「自分のバラが特別じゃないかもしれない」という現実を突きつけられ、混乱する。
そんな彼を変えたのが、地球で出会ったキツネとのやりとりだった。「絆は時間をかけて育つ」「本当に大切なことは目に見えない」──その言葉が、王子さまの心に深く響く。そして、バラへの想いが自分の中で本物だったことに気づく。
一年が経ち、王子さまは自分の星へ帰る決意をする。“ぼく”は悲しみに耐えきれないが、王子さまは「星を見上げて。僕の笑い声が聞こえるはずだよ」と言い残し、静かに姿を消す。
短い物語の中には、愛・孤独・友情・死・責任といった普遍的なテーマが、シンプルな言葉で丁寧に描かれています。

読者の年齢や経験によって、感じ方が何度でも変わる本――それが『星の王子さま』です。
「星の王子さま」の読書感想文のテーマにしやすいシーン6例+1
「星の王子さま」は寓話(登場人物や出来事を通して、人生や社会の真理・教訓を伝える物語)で、哲学的な側面があるので読み取りにくい作品でもあります。
ですが、シーンごとにテーマがあると分かると意味が分かるし、自分の考えも生まれやすい。
ということで、ここからは読書感想文を書く上でテーマにしやすいシーンと簡単なポイントを箇条書きにしてみました。
・僕と王子さまが「出会う」シーン
・「バラ」のシーン
・王子さまが「いろんな星」に行くシーン
・「キツネ」のシーン
・「井戸を探す」シーン
・王子さまとの「別れ」のシーン
・「一番大切なことは目には見えない」と語るシーン
多少前後するところもありますが、出てくる順でまとめました。
最後の1つは全体を通して伝えてくれるものなので、別枠にしています。
僕と王子さまが「出会う」シーン|テーマ「大人と子供の対比」
物語の始まりとなる印象的なシーンが、砂漠での「ぼく」と王子さまの出会い。
突然、何もない砂漠に現れたのは、小さな星から来たという不思議な少年。しかも彼は自己紹介もせず、いきなり「ヒツジの絵を描いて」と頼んできます。
このシーンのポイントは「大人」と「子ども」の対比。
現実にとらわれている“ぼく”と、目に見えないものを信じる“王子さま”。
ここから、ふたりが少しずつ心を通わせ、物語が動き出すのですね。
「いきなり何を言ってるんだ?」と思いつつも、王子さまのまっすぐな瞳にぼくは応えてしまう。
そこには損得や効率ではなく、心で人と向き合う大切さみたいなものを感じます。
この出会いは、ただの出発点ではなく、読者に「あなたは目の前の小さな声を受け止められますか?」と問いかけてくる、そんな深いシーンですね。
✅ あなたが「いきなりヒツジを描いて」と言われたら、どう感じるだろう?
✅ 大人になった今、王子さまのように「目に見えない大切なもの」を信じられているだろうか?
✅ この出会いが自分自身や、今の生活にどんな気づきを与えてくれたか?
「バラ」のシーン|テーマ「大切なものを見失いそうになる瞬間」
王子さまが地球を訪れて、最初に心を揺さぶられたのが「バラの花」のシーン。
王子さまにとって、自分の星で大切にしてきたたった一輪のバラ、それは「世界にたったひとつだけの特別な花」だと信じていました。
ところが、地球に来てみると、同じようなバラが何百本も咲いているのを目にしてしまいます。
その瞬間、王子さまは「自分のバラは特別じゃなかったんだ」と、深く落ち込んでしまうのですね。
これって、誰にでも起こりうることだと思います。
オリエンタルラジオの中田敦彦さんが『しくじり先生』で解説した時こんな風に説明してました。(原文を一部修正しています)
「近所にすごく美味しい中華料理屋があった。
誰にも言わず自分だけの特別なお店にしていた。
ある時、そのお店が“バーミヤン(チェーン店)”だと知った」

この例えは秀逸ですね。笑
「これが一番大事」と思っていたものが、実はどこにでもある(ように見えてしまう)…。そんな、大切なものを見失いそうになる瞬間を描いているシーンです。
でも、王子さまの物語はここで終わりません。この後、王子さまは「本当の特別さ」に気づいていくことになりますが、後で触れましょう。
✅ あなたも「大切なものが特別じゃない」と感じてしまった経験はある?
✅ 王子さまはなぜそんなにショックを受けたんだろう?
✅ 今、大切だと思っているものに、改めて気持ちを向けてみると何が見えてくる?
ちなみに、『しくじり先生』の星の王子様の授業の一部はYouTubeにUPされています。Abemaプレミアムでは全編公開もされているのでご覧ください。
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王子さまが「いろんな星」に行くシーン|テーマ「大人になるってどういうこと?」
バラとの別れをきっかけに、王子さまは「いろんな星」を旅していきます。
そこで出会うのは、王さま、うぬぼれ屋、呑み助、ビジネスマン、点灯夫、地理学者──。
どの大人も自分の世界に閉じこもり、大切なものが見えなくなっています。
王子さまは、どの星でも「変だな」と感じながらも、大人たちが何をしているのか、ちゃんと話を聞いてあげるんですね。
その優しさに気づくと、なんだか胸がチクッとしたりも。。。
「自分はこんな大人になっていないかな?」
「目の前の大事なことを見落としていないかな?」
そう問いかけられている気がして、ちょっとドキッとします。
でも、王子さまの旅は、そこで「大人を笑うため」ではなく、『大人の姿を自分の目で確かめるため』だったのかもしれません。
「大人になるってどういうこと?」
その問いを王子さまはそっと私たちに残していった気がします。
✅ あなたが出会った「変わっているな」と感じた大人は誰?
✅ 自分は「大人になったら、どんなふうになりたい」と思っている?
✅ 王子さまの旅を見て、あなたが「確かめてみたい」と思ったことは何?
「キツネ」のシーン|テーマ「本当に大切なものは時間をかけて育つ」
王子さまが地球で出会ったキツネ。この出会いが、王子さまの旅の中で一番深く心を揺さぶった出来事だったかもしれません。
キツネは王子さまに「飼いならしてほしい」と言います。
「飼いならす」とは、お互いを特別な存在にしていくことと受け取れるかもしれません。
毎日少しずつ距離を縮め、時間をかけて心を通わせていく。それが「絆」や「特別さ」を作るという大切なことをキツネは教えてくれるのです。
王子さまは、はじめは戸惑いながらも、キツネとの時間を大事に過ごしていく。
その積み重ねが、やがて「出会った時よりももっと寂しく、もっと大切に思える別れ」へとつながっていきます。
このシーンは「簡単に手に入るもの」「すぐに結果が出るもの」だけを求めがちな現代の私たちに、「時間をかけることの大切さ」を静かに問いかけているように感じる。
また、「バラ」のシーンで感じたあの気持ちに対する答えを提示してくれている重要な場面でもあります。
✅ あなたには「時間をかけて特別になった人やもの」はありますか?
✅ キツネが教えてくれた「飼いならす」という言葉、あなたはどう受け止めましたか?
✅ あなたは何かを「すぐに結果を求めすぎている」と感じることはありますか?
「井戸を探す」シーン|テーマ「効率より歩く時間の豊かさ」
砂漠で水を求めて歩き続ける王子さまと「ぼく」。
体も心も限界に近づいたころ、ついに井戸を見つけるのがこのシーンです。
ここで印象的なのは、王子さまが「渇きを抑える薬」の話を聞いたときの反応。
「時間を節約できる」と言われても、王子さまは「だったら井戸を探しに行くほうがいい」と言うのです。
現代を生きる私たちは、どうしても「早く」「効率よく」結果を出したいと考えてしまいがち。
でも王子さまは、「歩いて探す」「一緒に過ごす」「話をしながら進む」──
その“過程そのものが幸せ”だと気づかせてくれるのです。
井戸の水は、ただの水ではありません。
歩いた時間、話した言葉、静かな夜空…すべてが積み重なって「特別な水」になっているのです。
✅ あなたは「遠回りだな」と感じたけれど、実は意味があった…そんな経験はありますか?
✅ すぐに手に入るものより、時間をかけて探しに行くことの良さに気づいたことは?
✅ 誰かと一緒に「探し続けた」思い出や時間はありますか?
王子さまとの「別れ」のシーン|テーマ「姿は消えても思い出は心に残る」
物語のクライマックスは王子さまと「ぼく」の別れのシーン。
王子さまは、自分の星に帰るために毒ヘビに噛まれるという選択をします。
それは体だけをこの場所に置いて、心だけ自分の星に戻るため──。
「体は重すぎて持って帰れない」と語る王子さまの姿はなんとも切なく、ぼくも読者も受け入れがたい気持ちになります。
それでも王子さまは、静かに穏やかに別れを選ぶ。
別れ際、王子さまは「星を見上げて。僕の笑い声が聞こえてくるはずだから」と伝えます。
それは「ぼく」が夜空を見上げるたびに、王子さまを思い出し、心の中でつながり続けるように…。
姿が消えても思い出は消えない。
そんなメッセージを、王子さまはそっと残して旅立っていきます。
寂しいけれど、あたたかい。そんな不思議な読後感を味わえますね。
✅ あなたにとって「離れても思い出に残っている人や出来事」はありますか?
✅ 王子さまが「星を見て僕を思い出して」と言った気持ち、あなたはどう受け取りましたか?
✅ 「別れ」から学んだことや、これから自分が大事にしたいものは何ですか?
全体のテーマ「一番大切なことは目には見えない」
『星の王子さま』の中で、王子さまが何度も語る「一番大切なことは目には見えない」という言葉。
この一言こそが、物語全体を通して伝えたかったメッセージと言えるでしょう。
バラやキツネ、ぼくとの時間、そして最後の別れ──。
どれも見た目や結果だけを見ていたら、ただの出来事にすぎないかもしれません。
でも、その裏には、目には見えない「気持ち」や「絆」がちゃんとあったことを、王子さまは気づかせてくれます。
現実の世界でも、目に見えるものばかりを追いかけてしまうことは多い。
半年後の自分の姿よりも、今の自分の生活を優先する。けれども、見えないものにこそ大事な意味があるし、それを忘れずにいる。
そんな優しくて、でも深い問いかけを、この物語から受け取れます。
もちろん、この言葉をどう受け取るかは人それぞれ。

どう解釈するかが個性だし、読書感想文(表現)として一番面白い部分ですね。
✅ あなたが最近「目に見えるもの」ばかりに気を取られていたと感じることはありますか?
✅ 見た目や数字ではなく、心の中にちゃんと残っている「大切なもの」は何ですか?
✅ この言葉を、今の自分の生活や人間関係にどう活かしたいと思いますか?
以上の7つのテーマを意識してみると読書感想文が書きやすくなるでしょう。
1つのテーマに絞って書いてもいいし、迷ったら「一番大切なことは目には見えない」のキーワードから展開すれば何か書けるはず。
読書感想文は自分事を書くことが大事だと私は思います。
あらすじ部分は誰が書いても同じなので触れる程度にして、テーマとかキーワードとかから「自分が何を感じたのか?」「どう思ったのか?」「なぜそう受け止めたのか?」「これからどうしたいのか?」について書いてみてくださいね。
ぜひヒントを活用して、自分事として読書感想文を書いてみましょう。
ちなみに、私とAIが世代別で書いた読書感想文を別記事で書いています。
今回挙げたテーマの中からそれぞれ別のテーマを選んで書いているので、例文が知りたい方は合わせてご覧ください。
『星の王子さま』が読書感想文におすすめな理由
『星の王子さま』は、一見すると不思議で少し難しそうな物語に感じるかもしれません。
ですが実は、読書感想文を書く上でとても相性のよい作品です。なぜなら、この本には「自分の気持ちとつなげて考えやすい」特徴がたくさん詰まっているから。
物語の中では、王子さまが出会った人々とのやりとりや、有名な言葉を通して、「自分だったらどう思うか?」「これはどんな意味だろう?」と自然に問いを投げかけられるような構造になっています。
さらに、読書感想文に使いやすい名言やテーマが多く含まれていて、読み手の年代や経験によってさまざまな受け取り方ができるのも大きな魅力。
特に、次の3つのポイントが読書感想文との相性をよくしている理由として挙げられます。
- 自分の体験や価値観とつなげやすい
- 名言やキーワードから発想が広がる
- シーンごとに「問い」があるから選びやすい

このように、感じたこと・考えたことを言葉にしやすく、個性を出しやすい作品だからこそ、『星の王子さま』は多くの子どもたちにおすすめできる一冊なのです。
自分の体験や価値観とつなげやすい
『星の王子さま』は、登場人物のセリフや行動が抽象的である分、自分の体験や感情と照らし合わせやすい作品です。
たとえば、王子さまがバラを信じられなくなったシーンや大人の世界を見て戸惑う場面など、私たちが日常で感じる「迷いや違和感」に通じるものがたくさんあります。
感想文においては「自分だったらこう思う」「似たような経験がある」といった形で、読み手自身の価値観を自然に盛り込むことができます。
「あなたならどうする?」という問いを立てながら読めるので、書くときも無理なく言葉が出てきやすいのが大きな強みです。
名言やキーワードから発想が広がる
「一番大切なことは、目には見えない」──この言葉に心を動かされた人は多いはず。
『星の王子さま』には、こうした名言や印象的なフレーズが数多く登場します。
これらの言葉は、感想文の「書き出し」や「締めの一文」にぴったりですし、そこから自分の考えを広げていくきっかけにもなります。
たとえば、「飼いならすって、どういうことだろう?」「責任を持つって何だろう?」といった問いを自分の生活に引き寄せて考えることで、深みのある感想文に仕上がります。
名言を引用することで読みやすく説得力のある構成にもなりやすい点もメリットです。
シーンごとに「問い」があるから選びやすい
『星の王子さま』には、感想文のテーマにしやすいシーンが複数用意されています。
キツネとの別れ、井戸を探す旅、地球に来て初めて知る現実──それぞれの場面に、心を動かす「問い」が含まれていて、自分の関心に合ったテーマを選びやすくなっています。
たとえば「大人になるってどういうこと?」というテーマは高学年に、「誰かと絆を結ぶって何?」というテーマは中学・高校生にも響くでしょう。
感想文では「一番印象に残った場面」から書き始めるのが王道。
その点でも、『星の王子さま』は入り口が複数あり、どの年代の読者にも書きやすい作品だといえます。
まとめ
『星の王子さま』は、読む人の年齢や経験によって見え方が変わる奥深い物語です。
だからこそ、読書感想文を書くときには「どのシーンをテーマにするか」がとても重要。
今回紹介した6つのシーンと1つの全体テーマには、それぞれに“気づき”のタネが詰まっていて、自分の体験や考え方と自然につなげて書きやすくなっています。
また、この作品には「一番大切なことは目には見えない」といった印象的な言葉が多く登場し、感想文の書き出しや締めに活かしやすいのも大きな魅力です。
「どんなことを書けばいいか分からない…」と感じたときは、まず“自分が気になった場面”をひとつ選び、そのとき心に浮かんだ感情や、自分の体験と照らし合わせてみてください。そこから自然と、自分だけの読書感想文が生まれてくるはずです。
『星の王子さま』を、自分自身の“今”と向き合う機会に。
あなたにしか書けない一篇を、ぜひ言葉にしてみてください。
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